掌説うためいろ 二人の作曲家
本居長世は涙ぐみ、洟をすすった。ハンカチを取り出し、しきりに目尻や鼻を押さえた。野口雨情から「赤い靴」の〈きみ〉と言う名の童女の逸話を聞いた...
競馬と文学と童謡と……
本居長世は涙ぐみ、洟をすすった。ハンカチを取り出し、しきりに目尻や鼻を押さえた。野口雨情から「赤い靴」の〈きみ〉と言う名の童女の逸話を聞いた...
碧川かたは、その半生を女性の参政権、公民権、男女平等改革の婦人運動に捧げ、昭和三十七年一月の厳寒の日、九十二歳で亡くなった。 彼女の前夫の...
明治四十二年、不安な噂が広がりつつあった。フランスの高名な天文学者カミーユ・フレンマリオン博士によれば、来年の五月下旬にさしかかる頃、地球は...
駅の改札を出た細面の眼鏡の紳士が、彼を出迎えた丸い赤ら顔の眼鏡の紳士に向かって帽子をとって会釈をした。濃い鼻髭を蓄えた恰幅の良い紳士も帽子を...
領事館の職員がモスクワに住むステパノヴィチ・ワホーヴィチの兄に連絡を入れたらしい。パリに住むという叔母のラリーザが、漢口までキヨスキーを引き...
~北千住と門人たちの謎~ さて、「北千住の仙人」橋本律蔵という人は、どうして「自然真営道」百巻九十三冊を秘蔵していたのだろうか。彼の先祖は...
その数奇な人生の幕開けは、ロシアのニコライ皇太子の来日という物語から始まる。大泉黒石という、今や知る人ぞ知るアナキスト作家の話である。 ...
さて「トンと分からぬ」安藤昌益のことを書くに、様々なことに触れなくてはならない。既に判明確定していること、そこから浮かび上がる様々な「安藤昌...
大泉滉という俳優がいた。性格俳優と言われ、怪優とも評されていた。往年、人口に膾炙した役者ではなかった。知る人ぞ知る個性的脇役であってスターで...
数年前、ある出版社にお世話になっていたおり、二人のシリア人の青年と出会い、何度か親しく話をする機会もあった。彼等は日本語学校で学びながらアル...